最近、ニュースやワイドショーでいじめや体罰の事件が取り沙汰されているが、見ていても、キャスターや専門家の歯切れが悪い。理論的にシステムでいじめをなくそうとすると、かえっていじめの生まれる温床ができることになってしまうし、感情論や経験則をもとに「いじめられる方にも問題がある」なんか言ってしまうと叩かれるのは目に見えているからである。
個人的には、大人がいじめの被害者に対していかに逃げ道―人生の選択肢―を指し示してあげるかではないかと思うんですが、そもそもいじめの定義があいまいで、まわりがそうは思わなくても被害者本人がいじめと感じるといじめになってしまう。アホ、ブス、チビと言われても大人は他愛なく思う程度だが、子供にとっては恥ととらえ、生きてく意欲を失うこととなる。
それにいじめそのものが発覚しにくい性質で、被害者はいじめられることは恥ずかしいことなので、先生や親に言う訳がないし、親に言ったとして、先生や加害者の親に問い詰めても、事なかれ主義の学校側は認めないし、加害者の親もわが子かわいさに取り合ってくれない。目撃者であるクラスメイトもチクれば自分にいじめの矛先が向くので誰も言わない。そうして自殺という最悪の結果ではじめてまわりが大騒ぎするという次第である。
最近読んだ小説で、こうしたいじめをテーマにした小説があるのでおすすめの一冊を紹介します。
歌野晶午の「絶望ノート」です。ネタばれしない程度に内容を申すと、ある日、中2の息子の机の引き出しから、表紙に「絶望」と書かれた日記帳を母親が偶然見つけます。その中身を見て母親は愕然とします。そこには、息子が学校でいじめを受けていることが赤裸々に綴られており、自殺しようとしたがダメだったことや、万引きまでさせられていることなど、日々、いじめを受けて苦しんでいる日常が克明に記されているのです。「まさか自分の息子が学校でいじめを受け、こんなに苦しんでいるとは」日記を盗み見してしまった母親がとった行動とは…
結末へ行くにつれ、だんだん、いじめとは違う別のテーマへと変わっていくのがミソですが、私は子を持つ親ではないのでその気持ちがわかるとまでは言いませんが、子を持つ親にとっては結構ショッキングな内容です。ぜひご一読を。