あの震災からちょうど1年が経ちました。
当店では主に三陸地方のお魚を仕入れてきていたので、この1年大きな影響を受けました。幸いにも仕入先である宮城県塩釜市は、あの辺の大きな漁港の中では唯一大きな被害を免れました。気仙沼や石巻、釜石、宮古などの壊滅的な被害に比べれば、被害は少なく、漁港も早くに復興しました。日本三景の一つ、松島が防波堤替わりに守ってくれたんだと勝手に思っています。
しかし、肝心の漁師さんが亡くなり、漁船も流されているので、漁獲量が激減したので、お客様には大変迷惑をかけることになり、生牡蠣がメニューに載せられなくなりました。
魚が少ないながらも、今後も継続して塩釜から仕入れるつもりですし、これは単に店と取引先との関係というのだけでなく、この地方の産業の復興という祈りも含まれています。
だって三陸沖というのは世界の主な漁場の一つであって、漁獲量だけでなく魚の質という意味でも優れているのは、これまで仕入れてきた経験から実感としてあるのです。このままこの宝の海を見捨てる訳にはいかないです。
産業が復興しないことには、街は復興しません。魚が数多くとれることから漁港ができ、そこに加工工場ができ、市場ができて、そこに人が住むようになり、街が出来上がっていきます。
道路を整備し、家を作っただけで、はいそこに住みなさいと言われても、仕事がなく、ただ冬が寒いだけの所に誰も人は住みません。
震災に関してもう一つ、震災のがれきの処理がほとんど進んでいないとよくテレビでやっていますね。なんとか全国の都道府県でがれきを受け入れて、処理してあげたいというのは心情的にはわかるんですが、一方で現実として、おそろしく金と時間のかかる話だなとも思います。
みんなあのがれきをどうやって分散させようか、頭を悩ませているようですが、逆転の発想で、岩手、宮城、福島のそれぞれのがれきを全て1ヵ所に集めて巨大な「がれき山」を作ってはどうでしょう。
この悲劇を後世に伝えるための象徴として、多くの人命を失ったモニュメントとして、またいかに人間がムダな人工物を作り続けて地球環境を汚しているかという戒めの意味で。まあ、どこに作るかは問題でしょうけど。
なんなら福島原発はどうせ廃炉になるから、チェルノブイリをコンクリートで固めたように、あのがれき(特に放射能汚染されたもの)で固めてしまうとか。
いずれにせよ、汚染されていないがれきを受け入れるのはいいとしても、汚染されたものを拡散させるのだけは賛成できないです。
まあ一番いいたいのは、もっと現実を受け入れて、覚悟を持って取り組んでほしい政治家の人たちなんですけどね。あの1年前の、これから日本はどうなるんだという危機感、不安感という感覚と、あまり切迫感を感じさせないこの人たちの印象とズレがあるもので。